新潟 1869年11月12日
回答すべき貴殿からの便りがないため、引き続き報告を続けます。
その前に、ご要望にしたがい函館港が交易に何をもたらすか報告を致します。
短期間現地で過ごしましたが、外国人が行っていることは実に重要なものではなく主に中国への海藻の輸出に集中していました。かつては中国市場にむけやや大きな規模
で木材交易が行われていましたが、すでに途絶え、最後の製材所も何年か前に途絶えました。なぜなら十分な利益をもたらさなかったためです。
ロシアの船艦はまれにしか現れず、店主の利益の元もまた減じています。30人ほどのヨーロッパ人が立ち寄るわずかな船への供給をすることで食い扶持を稼いでいま
す。箱館ではウェルキー、ゲルトナー、ファーブル・ボーンの3社だけがリンネルやヨーロッパ産品の輸入に携わっています。
ところで、地元民が相当の量を購入するには貧しすぎることはすぐに判明し、いくつかの品物はなかなか良い値段であることに気づきましたが、キャムレットやシルティ
ング1包を買って新潟よりもおそらく低い相場で商売をする気になれませんでした。
オーサカ号がファーブル・ボーン社のためにリンネルを運んできましたが、箱館では買い手が見つからず、ファーブル氏の助言により新潟へ運ばれてきました。これは彼
の地でこの手の交易が成り立たないことの証左といえます。
外国人の居留地は岩山の麓にあり、長い道が横切っていて、みすぼらしい小屋が建っています。交易も成功も見られません。ただ湾は良好で、船は安全に停泊していま
す。
函館港についての報告は以上で十分かと思います。
ここまで書いたところで、貴殿からの11月6日付第1便を受け取りました。同封の交易報告、価格相場、その他に感謝申し上げます。
Ocean Queen号と政府の陸送便でお送りした手紙が順序通りに届きますよう期待します。
政府便で手紙の輸送にかかる日数をお知らせいただきうれしく思います。この便はウエーバー社が月一回送る便よりはるかに長くかかると聞いていて、当地と貴地を5日
で結んでいるとのことです。
この便はこちらの方を使い送ります。
今、借りた家に入っています。品物がまだ保税倉庫にあるのは、家のそばの倉庫へ運ぶにも猛烈な悪天候が続き不可能だったからです。港の砂州は航行不能で、政府によ
り箱館に米を運ぶためチャーターされたC.J.Textor号と同じ目的のラニミード号はすでに佐渡へ安全に停泊できる場所を求めざるをえなくなり、5日になりま
す。数日船長と8人の船員がボートに乗り込みC.J.Textorの準備のために夕方こぎ出し、砂州を越えようとしましたが、無残に溺れました。ジャワ人の船員だ
けが助けられました。バーンズ船長と5人の船員の遺体は清められ、埋葬されました。
船の停泊地は砂州の近くの海上であり積み荷の陸揚げは非常に危険が伴います。このことと新潟であることを唯一の理由として品物にかかる保険に鑑みて、ヨーロッパ人
に陸揚げを委託しました。停泊がより安全になるよう政府による努力がなされるよう強く望まれます。
新潟はよく知られた場所です。町のあちこちに運河が走り、両岸に木が植えられています。道は広く、家も大きく、よい評価を受けています。すべてのものが繁栄を見せ
ていて、この地が交易に関して明るい将来を迎えるとみられます。
販売の報告をした生糸N16/24以外の販売はまだありません。
この生糸の需要は高く、新たに供給を願いたく存じます。現在、1ピクルあたり228から229分の値がつけられ、二分金で取引交渉がされます。
N30/42はほとんど需要がなく、もう送らないでいただきたく存じます。
シルティングの在庫はなくなっており、現在私が唯一の保持者なので、手持ちの500ロットをいい値段に持って行くつもりです。
8 1/4ポンドシルティング500ロットに対して金札で1個あたり15分の引き合いがウェーバー商会より示されています。
この布地20〜30梱を喜んで受けたいと思います。
まだそのほかの私が持ち込んだ綿・ウール製品について早く売れるかはまだ正確には分かりかねます。
天候が悪くて、買い手はほとんどなく数日前にやっと商品見本をみせただけです。
報せによると、箱館では米が払底していて、1ピクルあたり19分とのことです。1級国産米は現在1ピクルあたり14分半です。ウェルキーとゲルトナー社には引き続
き情報をくれるよう依頼しています。もし米を発送する適当な機会があれば、有利な条件を生かし、投資するのが得策と考えます。
中国製綿には1ピクル35両まで値をつけることが可能です。
オランダ貿易会社社員
R.A.Mees
オランダ貿易会社
横浜支店長宛
transcription / 翻刻
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